足ることを知らず

Data Science, global business, management and MBA

MBA開始前のオリエンで学んだケーススタディの意味

6月からMBAのプログラムが始まる。

私の参加するプログラムは1年制のより経験豊富なリーダーに向けたプログラムになっており、これから苦楽を共にするメンバーとの交遊とMBAにあたっての生活準備、模擬授業をオリエンテーションとして4月にバーチャルで実施した。

 

その際にFacultyのトップであり、最も長くMIT Sloanで教鞭をとっているDuncan Simesterが、有名なシャワーシステムのケーススタディをもとに、ケーススタディの簡単な流れと、ケースとは一体なんなのか、ということをかいつまんで紹介してくれた。

 

16ページのケース文章から、必要な情報だけを拾うことは非ネイティブには簡単な仕事ではない。ダンカン曰く、重要なのは10%の情報であり、その「重要な情報」をフレームワークにはめていき、課題の抽出、課題解決をしていくことがケースの本質だと語る。外部情報をネットで集めたりすることで、重要な情報の確度を高めていくことはケースの本質から外れている。もちろん実務では大切なプロセスではあるが、あくまでケースはシミュレーションなのだ。

 

シャワーのケースでは、とても革新的な製品を作った主人公の会社が、製品が全く売れず苦戦しているというシナリオだった。こういう「一部分で成功しているが、結果的に失敗している」というのがケースシナリオとしては最も面白いらしい。

 

状況を説明すると、イギリスのシャワーテクノロジーというのは、重力に依存した不安定な水圧、そしてその不安定な水圧に伴う不安定な温度調節が課題だった。テクノロジーとして、水が出る寸前に温めるものや、お湯と水を混ぜた後に温度を計測してちょうどいいものを出すものなど、様々なモデルがあるが、どれも数十年変わらない、イノベーションの起こらない領域だった。

 

純化したが、実際のケースの文章を読むと、様々なファクトが次々と提示される。実はそこに因果関係があり、その因果が原因か結果かを正しく仕分けることが極めて重要だ。ともすれば、原因を突き詰めていくと、それは一つか二つの決定的な失敗に依存していることが多い。

・シャワーシステム業界は全くもって新しいイノベーションが起こっていなかった。(結果)→①一般消費者は特に製品に関する知識がなく、またその知識を高める方法もなかった。②配管工は常に人手不足で、新しい技術に対するインセンティブが何もなかった。→新製品を開発しても、この2つの原因を無視する若しくは変革できる要素がない限り、何も解決しない。

バリューチェーン上の「仲介業者」をうまく活用できていない(結果)→シャワーシステム業界はインテリアショールームや、配管工等、消費者との間に様々な仲介業者が存在しているが、どこかにフォーカスしない限り、既存の構造は変わらない。→業界構造を理解し、どこかのバリューチェーンを仲間にしなければならない(さもなくば敵対関係になる)

 

すなわちケースとは、新たに学んだフレームワークに対し、ノイズも含んだケースと呼ばれる情報の塊から、本質的に重要な情報を抜き出して、フレームワークにはめていくパズルだという説明をしていた。

 

そして、特訓すれば、このパズルを解くスピードも精度も驚くほど成長すると。彼自身最初のバックグラウンドはリーガルだったので、100ページ近くのケースを読まされていたと話していた。確かに馴れが、これらの情報の峻別精度と速度を高める唯一の方法かもしれない。

 

これをまた実ビジネスで活用するにはもうワンジャンプ必要だと思うが、少なくとも講義というテーブルの上で、極めて論理関係に注意を払った議論を行い、考えをぶつける、そのプロセス自体にとてもワクワクした。プログラムがはじまるのが今から待ち遠しい。