足ることを知らず

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広告代理業はどうやって値引きに対抗するのか?

値引きのインパクトは半端じゃない。
色々なところで、デフレの波が押し寄せています。BtoC然りBtoB然り。
小売が交渉力を持っているというのもあり、製造業ではこれらの傾向は顕著になっています。
それと同じ位、値引きのインパクトにやられているのが広告代理業。

「マージンを取る」という、代理業の本質が、今や否定されようとしています。
それは、ある意味、「今まで通りでは代理業が価値を持たない」ということです。


仕切りの力
代理店では「仕切り」という言葉を良く聞きます。これは、代理店が、まさにクライアントの代わりとなって、クライアントのニーズを反映しながら「広告出稿のオペレーション」を最適化して進める能力のことを言います。●●代理店というのは基本的に「仕切り」でお金を取ってきていると言っても過言ではありません。旅行代理店も同じように旅行プランを作成したり、現地で添乗員を付けて、顧客のニーズに合わせて旅行を「仕切る」仕事です。似たような業態では、80年代の商社も貿易代理店に近い役割を果たしていました。
飲み会の仕切りも、「仕切り」という業務領域においては重なる部分も多々あるので、広告代理店業界では、飲み会の仕切りが重視されたりしています。これは本当に大事なこと。

「気持ちよくする」とか「仕切る」というのは社会人として重要な能力であることに変わりはありません。
コレできないと、そもそも代理業以前のサービス業として成立しませんから。

仕切りだけでは完結しないこと
しかしながら、この「仕切り力」だけで、マージンを取ることが難しくなっています
理由は2つ。
①クライアント自身で効率的なオペレーションを回すことが可能になってきた。
②代理店の「仕切り」による差別化が出来なくなってきた。

①は、正に商社がぶち当たった壁でもあるのですが、クライアントにそれなりの知識があるので、わざわざ代理店を挟まずとも効率的なオペレーションが出来るようになってきたという状況です。ただ、①のケースはほとんど見ることはありません。
やはり、様々な業種で、色んなメディアを使って出稿をした経験が貯まっている代理店と自社のデータしか保有していないクライアントでは、どうしてもそのオペレーションに差が出てきてしまいます。
もし、あるとすれば近年パフォーマンスをあげているネット系新興クライアントでしょう。彼らはそもそも媒体サイドとしての情報を保有しているが故に、ともすれば代理店よりも知見を持っている場合があります。更に、彼らの出稿先は総合代理店が手薄と言われるネット系媒体中心だったりします。


んで、②。

今までは、マスメディアを仕切るプレーヤーが限られていて、差別化ポイントは仕切り力とクリエーティブくらいだったのですが
ネットが入ってきて、獲得効率等の、広告ROIがある程度、把握可能になりました。
こうなると、差別化ポイントに、「どちらが広告ROIを高められるか」という視点が入ることになります。

とはいえ、なかなかこの分野は答えがないのですね。結果、一番簡単なコストヘッジに落ち着いてしまいます。
即ち「値引き」

たとえ、代理店のオペレーションの方が、値引きよりもパフォーマンス改善に効くとしても、
値引きの威力は尋常ではありません。だって、実施前から、パフォーマンス改善がわかりますから。
なので、そろそろ代理店として考え始めなければならないのは「仕切り」によるパフォーマンス改善度の可視化です。特に、「可視化」は割とめんどくさい上に難しいところだったりします。

要するに
「差別化出来なくなったサービス業は全てコモディティ化し、低価格競争に陥る」
ということです。

もっと言うと、今の状態というのは
「差別化を『明示化出来ない』サービス業は全てコモディティ化し、低価格競争に陥る」
ということ。

で、パフォーマンスの可視化を考える上で、KPIの設定について考えなければなりません。



KPIについて
なお、コンサルティング会社のKPIはいろいろなのですが、例えば、BainのKPIは秀逸です。
企業価値企業価値を高める際に頼むコンサルティングを値引きしようという考えは正直ナンセンスでしょう。
更に彼らはコンサルテーションの成否を判断する際に、この「企業価値」から一切KPIをずらしません。

対照的に代理業の悪習慣の一つにKPIが定まらないということがあります。ま、キャンペーンの成否って企業価値に効くとは限らないし、何を成否の基準として見るのかはかなり難しいのですが、色んな値を見てれば、成功と判断出来る指標が一つくらいは見つかるよねっていう話。
別に、かたくなに一つのKPIにこだわらない姿勢は良いのですが、本当にクライアントのパフォーマンスを反映したKPIなのかという点は詰めるべきでしょう。少なくとも、キャンペーン実施前に、KPIの精査をして、成功・失敗の基準は決めておかなければなりません

今後は?
んで、今後の広告代理業の流れなのですが、2つ。

Ⅰ.競争の場所を変える。
商社が冬の時代から脱出した方法。より川上に。権益を買うという方法。
クライアントのビジネスのパートナーになるという方法です。
これは映画・コンテンツに関してはもうやっているかな。

Ⅱ.パフォーマンスドリブンのデータに基づいたオペレーションを回す。
結局、クライアント単体では保有出来ない上に、クライアントのパフォーマンスに直結するモノを持てば良いのです。
それは、今で言うと、「データ」とか「情報」なのかなと。
更に重要なのはクライアントよりも「広くデータを集め」、「早く処理する」こと。これで、データを元にした「仕切り」が可能になります。更に、元々のオペレーションをデータに基づいて行っているので、オペレーションによる改善効果もデータで可視化しやすいはずです。

そのほかにもテクノロジー系で色々あったりしますが、大きな流れは上記2つかなと感じていたり。

この二つを進めれば、今後も代理業は成立すると思うのですが、それが難しい場合、この業界は広告仲介業になって最終的にはどんどん中抜きされる気がします。危機感を持って、取り組んでいかないと。



※あくまで私見ですので、別にファクトでも何でもないです。