足ることを知らず

Data Science, global business, management and MBA

クリエーティブ時代の経験が割と機械学習エンジニアとして活きてるよって話

今の私のロール

今、機械学習エンジニアとして、ロンドンのデジタルエージェンシーでクラウドコンピューティングを使ったプロダクト開発に従事してます。エンドユーザーは、グローバルに広がるトレーディングデスクチームです。正しく設計されていれば、一気にグローバルでキャッシュを生むことができるというのが一番大きなやりがいでしょうか。

 

データ領域の課題

まず私が働いているのはメディアエージェンシーなので、グローバルに広がる大規模なオペレーション部隊=人的リソースを持っています。また、その領域はサーチを含まないProgrammatic Adなので、かなり限定されていると言ってもいいです。また、cost-conciousなカルチャーのため、long-termの投資はそこまでスコープにありません。

また、エージェンシー若しくはコンサルティング会社が向き合っている課題として、根本的に我々外注会社は自らのデータを保有していないという現実があります。よって、ありがちな課題としては①データ構造がクライアント個別にバラバラになり、スケーラブルな設計がしにくい、②そもそもデータにフルでアクセスできない、下手をすればマスキングされるという点にあります。

 

すると下記のような前提条件が出てきます。 

・まずデータをアクセスのしやすさレベル別に棚卸しすること

・オペレーション負担を低減若しくはパフォーマンスに貢献するプロダクトであること

・開発期間、開発資金、リソースは非常に限られていること

 

フレームワーク構築

これは日本でやらせていただいたことに等しいのですが、コンサルティングの定跡として下記のようなステップを踏みました。

①現状のリソース把握(ヒト、モノ、カネ)

ブレインストーミング

③アイディアの1 pager 化

④オプションの優先順位付け

 

①が結構どの企業もできていなくて(特に組織が大きいほど)、まず棚卸し、というところから始まるのが普通かと思います。そういう意味では情報整理ができていなかった我が組織では①から始めたことがとても良かったように思います。

 

さて、②と③ですが、私の過去の業務経験が割と活きました。これが今日の本題です。

 

データサイエンティストが企画者になる

何を隠しましょう私、一年間、コピーライター兼CMプランナー見習いをやらせていただきまして、数々の素晴らしい企画書を拝見してきました。もちろん翁レベルのクリエーターなら、数ページにまたがるかっこいいストーリテリング型のシナリオ企画書もありなのですが、それには相当のスキルと必要条件を要します。(クライアントのニーズ、世の中のトレンド、磨かれきったアイディア、そして何より圧倒的な成功体験に裏打ちされる自信が必要だと思います。)

 

我々データサイエンティストはそもそも企画的なものは苦手なのですが、我々の制約条件が多い以上、クリエーティブのようなアプローチでtechnically feasibleな企画案を10案程度出し、ビジネスチームにその評価・優先順位付けをビジネスの観点からしてもらうというのがベストかと考えました。

 

このアプローチの優秀な点は、ビジネス起点だと死にがちな実現性の部分もある程度担保された上で、たくさんのアイディアから投資すべきものをスケジュールやコスト感も鑑みて、全員で合意できるということです。

 

ここは決定的に広告クリエーティブと異なるところで、広告クリエーティブだと大体の「実現可能範囲」は想像できます。しかしながら、今回のようにスケジュールと予算の制約が厳しく、且つAI/機械学習という超専門領域がコアにある場合、ほとんどのぶっ飛んだアイディアは採用されることが少ないため、むしろ「何ができるか」という観点から始めるほうが良いと考えました。これがデータ・リソースの棚卸しからはじめた理由です。すなわち制約条件を100%クリアにして、可能なアイディアだけを提案するということです。

 

クリエーティブ企画シートの徹底

 さて、そんなぶっ飛んだアイディアを出す必要がないというのは、クリエーターにとって苦痛以外の何者でもないわけですが、企画書の書き方とか企画書のエッセンスは充分に真似できるものだと思います。

 

データサイエンティストはとてもコンサバになりがちで、アイディアとしてのジャンプは時々しにくいものですが、私はチームメイトに下記2つのことだけを伝えました。

・1センテンスで説明でき、面白いと思えるコアアイディアで企画を書くこと

・企画はパワポ1枚若しくは手書き1枚で、10秒で企画概要がわかるようにすること

 

 

多分この2つはクリエーティブ部門や企画部門では徹底されていることと思います。

ただ、データサイエンティストとしてはあまりなれない分野です。最初の企画持ち寄りMTGでは、何人かのチームメイトはWordで情報の整理だけをしてきたりしました。それはただのオリエンであり企画になってないよ、と伝えた後、10枚の人工知能企画を見せました。とにかくできるだけ短い言葉で企画概要が伝わるようにすること、また企画のワクワク感が一瞬で伝わるようにすることを熱心に教えました。

 

もちろんこれ自体はゴミのように見えると思う。しかしながら、この企画書でビジネスサイドと話し合い、企画を磨き上げていくことが重要であり、あくまでスライドは企画の種なのだということ、またリテラシーからくる制約条件が多い分、実は企画しやすいということも伝えました。第二回のMTGはかなり面白いアイディアだらけで超有意義な会議になったと思います。

 

日本人のジェネラリストが活きる道

実はこういうクレイジーなキャリアを歩んでいる欧米人は多くない上、あまり他業種の知見を持ち込むといった発想もないと思います。だからこそ、こういった特殊なアプローチやフレームワークをリーダーシップを持って引っ張れるときっと重宝される気がします。

 

もちろん、最低限のスペシャリストとしての知見やバックグラウンドは持っているべきですが、単領域でどうしても日本人が価値を出すのは難しいかと思います。

 

そんなときは日本のクレイジーな”異動”文化を存分に活かしてみてはどうでしょうか?