ニコランで起こっている現象
ニコニコランキングを毎週チェックしているのですが、最近ニコニコランキングでは珍しい現象が起こっています。
なんと週刊ニコニコランキング8週連続一位を取っているのです。しかしながら、この動画がランキングに表示された時に発されるコメントは必ずしもポジティブなものではありません。
「また工作か」
「信者キモい」
そして、同時に起こってきた現象として最近のニコラン上位の「釣り動画」の多さが挙げられます。BadApple!の前の1位は釣り動画【⊍ ⊍】 温かいミルク 出してあげる ☆ - ニコニコ動画でしたし、今週の2位ニコニコ動画の宝石箱 - ニコニコ動画と、釣り動画がランキングにおけるプレゼンスを大きくしています。
現在ニコ動のランキングにおいて問題となっている「工作」「信者」「釣り」について思うところを書いてみました。
既に文化になりつつある動画内の「抗争」
工作⇔逆工作
信者⇔アンチ
人気動画、長寿のランキング動画には必ず信者VSアンチの抗争が起こります。抗争は誹謗中傷コメントの嵐(荒らし)になるので、短期のコメントは伸びる傾向にありますが、長期的には動画のコンテンツ性を貶める方向に動きますし、初見の人間にとって近寄り難い存在になってしまいます。
この二者の競り合いですが、結局「粘着者」「常駐者」がいて成立するものなのです。その点では動画のコンテンツ性を上げる「コメント職人」と反対の役割をしつつも、動画に対する異常な愛着という意味で共通するわけです。特にヲタク的要素を持った層が多いニコニコではこの傾向が顕著に出るはずです。
結局信者による工作というのはお気に入りの動画をランキング上位に自らの力で「送り込む」ことで一種の欲望を満たしているだけなのかもしれません。そして、逆工作・アンチというのは「工作という間違った行動を正す」という大義名分を掲げて自らの力で動画を「貶める」ことで欲望を満たすわけです。
2chでも全く同様のことが起こっています。ゲハ板で行われていることと全く同じ構図が生まれているのではないでしょうか。
秀逸な釣りには価値がある
釣り=「タイトルによる騙し」の習慣が根付いたのは間違いなく2chなのですが、何の「内容価値」持たないはずの釣りスレもまとめblogに取り上げられることが少なくありません。これは「釣り」のタイトル、内容等に秀逸さ(意外性・独創性・論理性)等があればコンテンツとしてある程度の価値を持ってしまうのです。例えば「腹筋スレ」というのはいつ出現したかわかりませんが、まとめblogが好んで取り上げる記事の一つです。ただこれが「動画」において通用しているかというと疑問なのです。
釣られた反応・コメントが面白い釣りスレに対し、動画での釣りは「コメントを入力すれば●●」等のシステマティックなランキング上昇の仕掛けが施されています。釣られた反応が面白い動画はとても少ないのです。最近は「マイリスした上でコメント」という、マイリス解除率の低さに目を付けた悪質な釣りも蔓延しています。温かいミルク出してあげるはマイリス率11%、実に10人に1人が引っかかっているわけです。釣り動画、特にランキング上位に上がってくるものは「秀逸さ」に欠けるところがあるのではないでしょうか。
では動画で秀逸な釣りは不可能かといえばそんなことはありません。
これは画像でも可能(動画を画像に入れ替えても十分意味が通る)ですが、秀逸だなぁと思った例です。
御三家に対する偏見
以上の様にこれらの現象はコンテンツに対する愛着があればニコ動でなくても出てくる問題ですし、釣りに関しても制限を加えるほどの悪意はないと思われます。
ただ、全く別の問題としてボカロ・東方・アイマスの御三家は何故か工作を行ってるように思われやすいということです。確かに最大勢力であるため、信者が多く、工作も多く思われやすいのは仕方がないとも言えますが、制作者の気持ちを思うとこれらのジャンルで動画を出すことがためらわれる一つの理由になってしまうかもしれません。ファン=信者とされてしまうからです。言い方の問題だとは思うのですが、特にこの3つのジャンルではあまりに過剰な反応が起こっており、ニコ動にとってよくないことだなぁと強く感じます。
ランキングが乱れる原因
結局、上記の工作・抗争でランキングが乱れることは絶対に避けられません。むしろ工作というのはそれを狙っているので。そして、釣り動画もシステマティックにランキングを乱す方向へと向かうでしょう。
これらでランキングが乱れることになったのは意外にも「フリー」が原因なのかもしれません。フリーについてはこちらのエントリ日本独自のフリー - 足ることを知らず〜Don’t feel satisfied 〜で説明しています。ランキングを上げるために莫大な資金やリスクが必要ならば、恐らく工作なんて出来ないでしょうし、釣り動画がシステムを改編しようと、釣りに対する警戒心は今の比ではないでしょう。
結局、再生・コメント・マイリスにほとんどコストやリスクがかからない状況ではランキングを乱すことはとても容易に行えるのです。
この時代、ランキングなんてどうでもいいと思うかもしれませんが、ポータルサイトに広告を出稿する立場としてはトップが工作と釣りであふれているサイトなんて敬遠したくなるサイトの一つです。動画閲覧者にとっても、限られた時間を無数の動画に割くわけにはいかないので、集中と選択が必要で、その参考指標としてランキングはぜひとも使いこなしたいものです。ランキングはこれからも「動画閲覧者」だけでなく、「ニコ動」にとっても重要になるでしょう。
対処法は「ランキングの切り口」を多様にする(対象の縮小)ことだったり、パラメーターの増加に何らかのコストを加えること、そして市場の拡大しかありません。恐らく縮小・制限・制約・規制では本質的な問題は解決しません。それは成長やネットにおける本流=規制等の緩和と相反することだからです。ただし、成長に伴う利用者の多様化が工作の効果を薄め、本当にランキングを解決するかというとそうとも言えません。フリーの影響もあり、利用者一人一人が等価にカウント出来ないからです。恐らく信者・逆信者の方々は利用者何百人分もの影響を及ぼすことが出来ます。結局、利用者を増やすだけでなく、ヘビーユーザーを増やす努力もしなければ工作を防ぐことは難しいのです。