足ることを知らず

Data Science, global business, management and MBA

【祝200万人】ニコニコ動画が事業として激アツな件

ニコニコ動画のプレミアム会員数が200万を突破、記念キャンペーンも - デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
遂に6/22、ニコニコのプレミアム会員数が200万人を突破しました。
1人500円として、月10億、年120億の売上を誇る収益源になったわけで、375億(2013年度見込み)のdwangoにとっても、30%を超える貴重な収益源になりました。
恐らく利益構成を鑑みると、その存在感はもっと大きいでしょう。

niconicoでは、2007年6月18日からプレミアム会員サービスを開始し、
2010年10月13日に100万人、2012年1月4日には150万人を突破し、
プレミアム会員サービス開始から6年たつ今月200万人を達成した。

思えばボクもニコ動のプレミアム会員30万番台なので、
この数年でニコニコがどのような変遷を「ビジネスとして」遂げてきたか、若干気になるわけです。


"プレミアム率"の推移
決算資料を元に、ニコ動の会員数とプレミアム会員数、その比率をプロットしてみました。


驚くべき発見がここにはあります。折れ線グラフを見てみましょう。
なるほど。プレミアム比率は2011年の12月頃、即ち1年半前からほとんど横ばい。
6%弱をずっと維持しています。
即ち「莫大な会員数の中で、プレミアム比率をあげていく」という目標設定に限界が見えた気がします。
ここ1年間は純増する会員数が、プレミアム会員数を引っ張ってきたのです。

この6%が臨界値というのは、WEBの世界では納得感高いです。
よくCRMの世界では、8:2の法則なんて言いますが、
フリーが蔓延するWEBの世界では、もっと課金ユーザーの負担は偏っています。
例えば、ソシャゲはこんな記事が出てますね。http://alfalfalfa.com/archives/6617090.html
1%で33%の収益。ニコニコの場合、プレミアム収益は全体の74%程度ですから、6%のユーザーで74%の収益を占めることになります。


いつぞやのフリーミアムという言葉が流行った時代、あらゆるWEBサービスの中でフリーミアムを体現しているのは、ニコニコでした。
DeNAGREEフリーミアムですが、以前書いた日本独自のフリー - 足ることを知らず〜Don’t feel satisfied 〜のように、少しソシャゲは毛色が違います。)
そのニコニコが何人のプレミアムで、何人の無料会員を支えるのか。
その形の一つが、恐らく1人が出す500円で16〜20人を支えるのが日本のフリーミアム
会員単価システムでのバランスなのではないでしょうか。
(勿論、Priceに依存するので、あくまで500円という価格の仮定がありますが)

また、今後を鑑みたとき、DeNAGREEの会員数もそうなのですが、2000万人、3000万人は、Webサービス会員数の限界だったりします。
日本の人口は1億2000万人と言われていますが、その中でWEBに定常的に触れるのは、約8000万人程度です。
(もっと増えてるかも。ちょっと前までのビデオリサーチ社やネットレイティングス社の水準です。)
Webいじる人の5割が登録してるサービスなんて、Googleでも達成してるかどうかなので、よくよく考えていくと、
ニコニコも会員数の成長に関しては、ある種の停滞期に入っていくと考えて良いでしょう。
(会員アカウントはこれからも増えていくかもしれませんが。ユーザーじゃなくて、アカウントね。)


でも、そんな停滞期でもニコニコの収益は下図のように利益を大きく伸ばしています。

プレミアム会員の推移とニコニコの収益推移
では、プレミアム会員が、50万人(2009年9月)、100万人(2010年12月)、200万人(2013年6月)と推移するにつれて、ニコニコの収益構造や事業構造はどのように変化しているのでしょうか。
※2013年6月の実績はまだ出ていないため、2013年3月の実績を代用しました。

調べようと思って、2009年9月の決算資料を見て、驚愕しました。

!?
利益率今より高くね!?
あっ、マイナスかぁ(察し)
プレミアム50万人の頃って、こんな決算だったんですね・・・汗


念のため、売上-原価-販管費-配賦費用=営業利益です。
まず、売上から見ていきましょう。売上を収益セグメントに分けました。

もうちょっとわかりやすく、構成にフォーカスすると下記の様になります。

結構意外なのは、全体収益のプレミアム収益に対する依存度は約72〜75%とほとんど変わってないのですね。
残りの30%については、広告費をポイントが喰っている形になっています。
いや、広告費も成長しているのですが、ポイントその他収益が異常な伸びなのです。

50万人突破時を100%とした時、各セグメントの収益率を表すと下記の様になります。

18倍。圧巻のニコニコポイント。
広告も1.8倍と頑張ってはいるのですが、いかんせん広告費はPV(広告量)とオーディエンスの質(広告単価)に依存するので、そこまで大幅な成長は見込めません。むしろ順調なのかも。


考察と今後の流れ
まだ事業の根幹は、プレミアム会員にあるけれども、今後の伸びを考えるとポイント系の事業に力を入れていく感じでしょうか。
プレミアム会員はどこまで伸びるかわかりませんが、上の仮説が正しければ、
たとえ、ネット人口の半分、4000万人を会員にしたところで
見込めるプレミアム会員は240万人ですから、大きな伸びは期待出来ません。
プレミアム会員によっぽど大きなインセンティブが付けば、6%の壁を打ち破れるかもしれませんが、
ある意味、そのインセンティブを従量課金にしているのがポイントと考えると、そこはカニバる可能性が出てきます。

逆に、プレミアム会員の価格を細かく分けて、従量課金に近づけていくという方法もあるかもしれません。

お荷物だった時代が懐かしい
ちなみに、dwango全体の話ですが、2011年、2012年ポータル事業の売上高成長は、ドワンゴの売上高成長と、ほぼ同じ、若しくは上回っています。

ニコ動が超優良事業になり始めた件 - 足ることを知らず〜Don’t feel satisfied 〜
私が上のエントリを書いた2010年2月ごろは、売上比率12%、売上高成長比率33%程度でした。
それが今や、売上比率では40%近く、売上高成長比率では100%を超える事業です。
遂に、ドワンゴの成長を担う、大黒柱まで成長したなぁと。
3年前まではniconicoは、確かにお荷物でした。でも、今や稼ぎ頭。
コンテンツだけでなく、事業として、激アツになってた・・・という話。

次回(あれば・・・)コスト面を見ていきます!

※決算定義が2009年から大きく変わっているため、収益に関しては単純比較出来ません。
 営業利益の算出方法も、研究費を事業ごとに割り振っているのが、2010年からになるため、
 あくまで参考値です。

参考URL
株式の状況|IR情報|株式会社ドワンゴ
プレミアム会員の伸びは2年前から減っている : ニコニコ動画研究所