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ニコ動が超優良『黒字』事業になり始めた件

前の記事を書いたのが第1四半期決算発表が終わってすぐの2月9日でした。
ニコ動が超優良事業になり始めた件 - 足ることを知らず〜Don’t feel satisfied 〜

3か月後の第2四半期決算発表で、遂に黒字化。素晴らしいです。

http://info.dwango.co.jp/sp/resultbriefing/20100513/100513_ir.pdf
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なったではなく、なり始めた
今回の題名は「ニコ動が超優良『黒字』事業になり始めた件」ですが、「へ?ただ単に黒字になっただけじゃねーの?」と思っている方もいらっしゃるでしょう。
でも「なった」ではないのです。「なり始めた」なのです。
その理由を次節以降でお話しましょう。

収益面
まず、決算短信の本文はどうなっているのでしょうか。

ポータル事業においては、ニコニコ動画が更なるサービスの強化やユーザの利便性向上に努めてまいりました。サービス面においては、政治や音楽・スポーツ、芸能やニュース・情報など、他メディアにはない斬新かつ新鮮な各種コンテンツをリアルタイム配信する「ニコニコ生放送」の積極的な展開や、年齢・性別に拘らない様々な嗜好を持ったあらゆるユーザに対応した「ニコニコチャンネル」の拡大、動画投稿・視聴以外のポイントを利用した新たなサービス展開を図るなど、一層の強化に努めてまいりました。
これらの取り組みにより、平成22年3月末には登録会員数1,634万人、様々な特典が受けられる「ニコニコプレミ
アム会員」は74万人、携帯電話でも楽しめる「ニコニコ動画モバイル」の会員数は494万人となりました。
収益面においては、圧倒的なユーザ支持を得ている「ニコニコ生放送」の人気や、携帯電話をはじめとする入会導
線の見直しや多様化などにより「ニコニコプレミアム会員」が順調に増加し、有料会員収入が大きく貢献しております。また、広告収入につきましては、経済環境などの影響を受けながらも着実に貢献してきております。その他の収入につきましても、引き続き小幅ながら着実に伸張しております。
費用面においては、登録会員数の増加やユーザの利用頻度増加による回線やサーバなどのインフラ費用の増加は落
ち着いたものの、「ニコニコ生放送」など、集客・収入に直接結びつくサービスへの投資や新たな収益源となりうるサービスへの投資、ユーザイベント開催費用などが発生しており、未だ本格的な収益への貢献には至っておりません。
以上の結果、ポータル事業の売上高は27億78百万円(前年同期比104.4%増)、営業損失は1億45百万円(前年同期は8億87百万円の営業損失)となりました。

あれ?黒字じゃねーじゃん!?

と思った方、これは2009年9月〜2010年3月の半年間のデータなので、微妙に赤字なのです。
今回、黒字化したのは2010年1月〜2010年3月。これを算出するには第一四半期のデータと第二四半期のデータを統合して、単期のデータを出さなければなりません。また、ポータル事業=ニコニコ動画とは完全に言い切れないので、2010年1月〜3月のポータル事業の決算をみると、700万円の赤字となります。

売上原価をほとんど変えずに売上高を13.8%伸ばしています。よって、総利益は134%増、約2.3倍です。販管費が17%増していることにより、微妙な赤字になっているようです。ニコニコ大会議をはじめとした、販促費が重くのしかかっているのではないでしょうか。

ポータル事業とニコニコの微細な違いについてはわかりませんが、ニュースサイトによると
「ニコニコ動画」事業が初の黒字化、四半期ベースで2900万円の利益 -INTERNET Watch Watch

ドワンゴは13日、子会社のニワンゴが運営する「ニコニコ動画」が2010年度第2四半期(2010年1〜3月)で黒字化したことを明らかにした。売上高は14億2800万円、黒字額は2900万円だった。ニコニコ動画が四半期ベースで黒字化したのは、2006年12月に運営を開始して以来初。


ニコニコ動画の売上高の構成は以下のようになっています。

どんどん、プレミアム会員収入の占める割合が増えています。

円グラフに示すと以下のようになります。

遂に、売上高の76%を占める大収入源になったんですね。また、伸び幅でいくと、ポイントその他収入が大きく伸びていることも見逃せません。1〜3月の3か月累計8,000万円のうち、3月の売上は4,700万円なので、今まさに、大きく伸び始めたといいかもしれません。


売上高を支える会員数の動向は以下のとおり。

ここで、プレミアム会員/全会員の比を考えてみましょう。
現在の比率は77.2÷1,670=4.6%ですが、月間の増加ペースについて考えると3÷35=8.6%であり、有料会員の占める割合が高くなってきていることがわかります。生放送ユーザーと一般ユーザーでは滞在時間に二倍近くの差があるようです。生放送が非常に活発になっていることも、有料会員のインセンティブを高めている一因になっているかもしれません。
また、モバイルに関しても同じような計算をすると大体、1/3のオーダーでモバイル会員が存在・増加しているようです。

単純計算で月間3万人のプレミアム会員増加ならば、1年で3×500×12×12÷2=10億800万の売上増加となります。さすがに6月〜12月のペース(月間4万人)は維持出来ていませんが、それでも7割程度のペースを維持しています。


費用面


研究開発費が大幅に削れています。今までは売上の7%を研究開発に回していたのを、3%程度に抑えています。
多くの新機能を発表したにも関わらず、これだけ研究開発費が抑えられているということは驚きです。

販促費と支払手数料が未だに抑えられていませんが、売上比率は推移していないといえます。特に販促費は大会議も終わったのでしばらくは落ち着くのではないでしょうか。


3つの伸びしろ
さて、今回ニコニコ動画が黒字に「なり始めた」と述べた理由は、これまで述べたように、収益の源であるプレミアム会員が今後も堅調に伸びていくこと、黒字を打ち消すような大きなコストの予兆がないことの二点から、今後も黒字が続いていくだろうという予想があるからです。

しかしながら、これだけではありません。もう既に、新しい3つの伸びしろがニコニコの収益を後押ししようとしています。
それは、

・広告媒体としての伸びしろ
・モバイルコンテンツとしての伸びしろ
・第二のフリーミアム収益=ニコニコポイントの伸びしろ

特に3つ目のニコニコポイントに関してはとても興味があります。先ほど、売上が伸びてきたという話もしましたが、プレミアム会員収入とニコニコポイント収入は、「月額課金と従量課金」のような印象を感じます。ニコニコポイントを消費して、プレミアム会員のサービスが受けられるようにすると、ポイント消費のレートさえ間違えなければ、カニバリズムもなく、従量課金から月額課金への誘導すら出来るのではないでしょうか。