不恰好経営を読んだ。
- 作者: 南場智子
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2013/06/11
- メディア: 単行本
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南場さんの不恰好経営を読んだ。
DeNAは、ボクにとって何かしらの由縁がある企業だった。
大学時代の親友は、理系なのに学部を卒業してDeNAに行った。8年前、彼と東大生限定の就職活動セミナーに行った時に名物女社長と呼ばれる人が熱く叫んでいたのを覚えている。
かくいうボクは、めちゃイケのような番組を作ることに携わりたくて、フジテレビとかTBSのブースばかり巡っていた。将来働くことになる広告代理店なんて、見向きもしなかったし、何をしている企業かそもそも知らなかった。博報堂も白鳳堂って書くと思ってたくらい。(なんかかっこいい)
で、卒業式の日、DeNAでの仕事を楽しみにしている彼を見て、そのDeNAって企業は一体全体どんな魅力があるのか、大変疑問に思っていたのである。当時は就職氷河期も終わって、ある程度の売り手市場だった。そんな中、投資サークルとかに入っていて、コミュ力も高く、リア充であるものの、プログラミングが出来たわけでもない彼が(彼はプログラミングの講義でBだった。ボクはギリギリDにならないC)、何故DeNAに入ったのか疑問だった。
次にDeNAに関わったのは、2年後、新入社員の研修だった。その頃には、元マッキンゼーで、モバゲーが跳ね始めているくらいの情報は仕入れていた。
その研修で南場さんは熱くデジタル広告の展望と自社の展望について語ってくれた。しかしながら、ひねくれ者で斜に構え、南場さんの一番キライなタイプであろうボクは、「フジテレビとDeNAの企業価値を比較したスライド」を見て、収益構造の違う2企業の企業価値を比較しても意味ないだろうと思っていた。そもそもメディアとしての価値と投資対象としての価値は全くと言っていいほど異なるだろうと。そんな屁理屈を付けて、南場さんの真意を理解しようとしなかった。
それは、大企業に入って、これから自分が描くキャリアが全く見えなかったこともある。特に商社とか、代理店など、ブツを扱わない会社は、配属が就職で、部署異動はもはや転職である。
その頃、DeNAに入った彼は、海外でプログラマーとして働いていた。そんな彼が、実に羨ましかった。入社時は英語もプログラミングも全然だった彼が、今やどちらも手に入れたプロフェッショナルとして働いている。
英語が話せる人間が山ほどいる弊社で、自分にそんなキャリアを歩むことは無理だと思った。
それが、そんな批判的な姿勢を取らせたのだった。
今となっては、南場さんのメッセージが少しだけわかる気がする。恐らくマスに対して、デジタル広告をなめがちだったウチの会社に対し、DeNAの存在感というのを感じて欲しかったのだと思う。
そこでも、詰まらなかったら、ウチに来い!とおっしゃってたなぁ。
次に関わったのはクライアントとして。
DeNAは媒体としての存在感以上に、クライアントとしての存在感が凄い。
本当に素晴らしいクライアントだった。
正直、このクライアントに鍛えられて、ボクはデータ分析が好きになったし、自分が光る芽を見つけた気がした。
そんな近からず遠からずのDeNAの動向は担当をはずれても、ずっと追いかけていた。
南場さんのイメージが、特に良かったわけではない。すごくビッグマウスなイメージだった。
ただ、旦那さんの病気を理由に退任するというニュースを聞いて、少し自分の持っているイメージに疑問を持った。
自分が思い込んでいるスポークスマンとしての南場さんとは全く異なる姿だった。
ブログを見てみた。おもしろい。
文章から、彼女がしゃべっている姿が浮かんでくるような素直で正直な文体だった。
日経や色んなニュースサイトに載っていた記事を読んだ。
おもしろい。
実はこの人はとても気持ちのいい人ではないか、そう思えてきた。
知性とリズムと感情が全て共存している文章を書く。
バカなこともおおいに書いている。ただし、へりくだったり、バカに見せることで共感を誘うわけではない。
見せ方をうまくしようとか、そういうところとは明らかに別次元に生きている気がした。
ちなみに肝心の書評だが、1時間くらいで読んでしまった。付箋は30個ほど付いている。ページ数が約250なので、これはかなり多い。(ボクのアベレージは30ページに一つの付箋)
いい買い物だった。
ベンチャーは、仲間と成功体験だと、いつも思う。
川上さんのドワンゴ立ち上げの話も一緒だが、タレントを束ねる経営者は、賢くあってはいけないと感じた。
賢いよりも、賢くなることの方がよっぽど大切だ。
それほどまでに、経営というのはロールモデルがないものなのだと思った。
真似だけでは、うまくいかない。自分が切り開くしかないのだ。
そのためには、熱が必要になる。論理を超えた熱が。
この本を読むと、少しだけその熱をもらえる。
年中、何らかの熱にかかっている南場さんだからこそ、書けた本なのだと思う。