足ることを知らず

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大企業はどうやって生き残れるのか?

個人のキャリアとしての大企業の存在意義は下記のトイアンナさんの意見にまとまってると思うし、日本の旧来企業ではなく、グローバルジャイアントの経験を踏まえたものなので、この記事では割愛する。
就活生へ安易にベンチャーを勧める大人が多すぎてキレそう - トイアンナのぐだぐだ

大企業の存在意義
大企業の存在意義と書くととても大層なことのように聞こえるが、このブログの主題は「いわゆる大企業のビジネスというのがスタートアップなどのDisruptorに破壊される側にあり、時々既得権益として疎まれすらする中で、大企業が今後社会に還元していくには何をすることが良いのか」ということである。

因みに、十年前、二十年前までは、生活に欠かせない社会インフラの提供や、それこそ人類の「進化」とも呼べるようなイノベーションが、大企業の提供してきた価値だったように思える。それらが、世界を代表するような巨大な企業によって開発、平準化され、普及してきたというのが、これまでのパラダイムだった。そういう意味では、大企業が競争し、より良いもの、より良いサービスを生み出すことによって人類はより利便性の高いベネフィットを享受してきたと言える。

業界再編がありえないスパンで繰り返される時代
デジタル、即ち情報の氾濫とその隆盛とともに、Competitorの定義は非常に曖昧になった。消費者が自ら情報を集め、代替品を定義する時代である。即ち、企業側が引いてきたIndustryのラインが消費者・生活者によって曖昧にされる時代になっていると感じる。

その中で、新たな価値を提示し、業界構造自体を変えようとするスタートアップは、これまでの産業のルールを提示してきた大企業にとって脅威以外の何物でもない。将棋の絶対勝てる打ち筋を何千人で頑張って研究し実行してきたのに将棋のコマを無限に量産するプレーヤーがしれっと現れるのである。問題は、大企業がその新しいルールに対応するのは容易ではないということだ。人が増えれば増えるほど、ガバナンスやマニュアルがものを言うようになる。そして、その蓄積知による成功体験はある意味、変革をしなければならない際の枷になりうると思う。

我々が大学院のときに経営学の講義で教えられたのは「持続可能な成長=Sustainable Growth」だった。今、それを単一のビジネスで成立させてもその持続可能期間は短い。どちらかといえば、Quick and Dirtyに新しいビジネスを試して、その不連続な試行の結果、持続可能な成長をしているように「見える」企業が勝っていくように思える。

既存事業が儲かっているので、既存事業に投資し、その競争優位性を強めるのは、非常に論理的に聞こえるが、もはやその産業自体がアメーバのように変化していく時代では、既存事業でデファクトをいち早く取って、そのカネを次の事業に回さなければならない。これができているのは日本の企業だとソフトバンクくらいじゃなかろうか。

大企業が今後やっていくこと
そこで、大企業の価値とは一体どこにあるのかということをもう一度考えてみたい。まず、今後の大企業の大きな価値としては大きな図体から生まれる「余白」にある。
• Top 20 R&D spenders 2017 | Statistic
現在R&Dのトップ企業はAmazon、Alphabetだが、彼らのR&D費の行き先が現業のものかというと必ずしもそうではないと思う。むしろ、彼らの次のビジネスの種であったり、「人材を集めるため」の先進的な領域が多いのではないだろうか。もちろん、彼らの芳醇な利益を生むビジネスモデルもそれとは無関係ではないが、Amazonの利益率は決して高くないのにもかかわらず、彼らのR&D投資は常軌を逸したレベルにある。それはAmazon自体が、「持続可能な優位性」の幻覚をかなぐり捨て「常に新しい優位性を確立しようとする」企業文化にこそ、持続可能性があると考えているように見える。

一方で、その大きな資本をもとにした企業買収も一つの役割と考えられると思う。これまでは水平統合・投資が圧倒的に多かったと思われるが、今後は広義の業界定義による垂直調合や水平統合も増えていくと思う。更にはCVC投資のようにスタートアップの成長エンジンとしての役割も期待されると思う。。すなわち、Disruptorが怖いのであれば、それを取り込んでしまうということだ。

これを考えていくと、大企業というのは、ファイナンス機能とネクストビジネスの研究機能に集約されていくのかもしれない、なんて妄想が頭に浮かんでくる。
それまで築き上げたなにかにすがることなく、いち早くヒト・モノ・カネをフレキシブルに次の領域に突っ込むことができる企業が生き残るのではないだろうか。

そのときに大企業は、大企業が大企業である意味、今の規模を維持する意味という本質的な質問をもう一度考え直せると思う。