足ることを知らず

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Digital disruptorの競争優位性は最後、在庫に帰結すると思う。

Disruptorとは?

Disruptionという言葉がある。

disruptionの意味・使い方・読み方 | Weblio英和辞書

崩壊という意味なのだが、よく欧米ではDigital Disruptionという言葉で、既存の産業構造がデジタルによる最適化・細分化によって不可逆的な変化を促される現象を表現している。

www.gartner.com

 

Disruptorの代表例

典型的なものが、FacebookGoogleによる広告のDisruption。Amazonは小売業界をDisruptionした。Netflixレンタルビデオ業界からコンテンツ業界のDisruptorへ。そして、UberAirbnbはそれぞれタクシー業界(マーケットによっては交通全体)とホテル業界をDisruptしようとしている。もうひとつはTinderに代表されるカップルマッチングのDisruptionだろうか。

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Why Netflix Is The Ultimate Digital Disruptor

上記画像の元ネタは2016年のSANDY CARTER(IBM)のスライドらしい。

IBM: Disruption has Already Happened - VR World

 

各々、色々なDisrupt先の業界があるが、まぁこれは解釈次第というところか。

 

Disruptionが起こる理由

これらのプレーヤーが起こしている変化は不可逆的で一度奪われたシェアは元には戻らないと言われる。ユーザー目線での圧倒的なベネフィットがあるからだ。

例えば、下記のような要素。

ビッグデータによる大量N対NのSupplyとDemandのマッチング

②時間短縮

③低価格

④取引のTransparencyとCredibility

 

Uberの例で行くと、従来のタクシー配車サービスに対し、①より多くのドライバーに細かい粒度(車種や人数、Poolなど)のリクエストでリーチでき、②アプリによる簡単な出発/行先入力、配車、決済。③従来タクシーより安い価格。④車がどこにいるか、どういうルートで行くかというのを可視化するため、信頼性が高く、更にユーザーからのReviewによる評価で、変なドライバーに当たることも少なくなった。

 

この点のうまく整理された記事とか探したんだけど見つからなかった・・・。

誰か、知ってたら教えてください。

 

Disruptした後の差別化要因

では、一体何が勝ち負けを決める要因になるのだろうか。

それは、在庫の質と量だと思っている。

無限にあると思われるインターネット上の情報だが、そこには確実に質の概念がある。そして良質の在庫であればあるほど、その限定性は高まる。

 

例えば以前にブログにも書いたが、本当に価値のあるデジタル広告の在庫は確実に有限だと言える。人間の頭の中に入る情報量は限られているからだ。一方でそれを無視して、表面的な指標と市場拡大を元に実質以上に大きくなってしまったのがデジタル広告だった。

monnalisasmile.hatenablog.com

 

 

例えば、LyftUberで激烈な競争となっていたのは、顧客の取り合いではなく、ドライバー、すなわち提供在庫の確保だった。両方のドライバーをやって、どちらがいいかを述べているユーザーのブログなどもある。(下記)

www.businessinsider.com

下記はUberがドライバーに対してどれだけLyftよりもいいプラットフォームかを述べているページ。Uberは長期的にこういうところでの在庫調達が最終的な勝ち負けを握る可能性が高いことを理解していると思う。

https://www.uber.com/us/en/drive/uber-vs-lyft/

 

よって、ユーザー体験をDifferentiateするためには、まず在庫のDifferentiationということになるのだ。

 

イケメンが一人もいないTinderを考えてみてほしい。過去に中の人から聞いた話だが、これらのマッチングアプリにでは、トップ1%に80%のLike(リクエスト)が集中するらしい。いかに良質在庫を確保し、ロングテールにデマンドを分散させることがこれらのプレイヤーに重要かという好例だと思う。

 

更に面白い材料として、シリコンバレーのVCでは泣く子も黙るANDREESSEN HOROWITZが下記のブログを出している。

a16z.com

 この記事ではCraigListやeBayのようなプラットフォームがどのようにして特化型='specific vertical'なプラットフォームに乗り換えられていったかがわかる。ここではユーザーエキスペリエンスの特化というところに焦点が当てられている。総花的プラットフォームが、事業を拡大するたびにユーザーのSpecificなニーズに答えることが難しくなるジレンマである。

しかしながら、在庫確保という側面で考えると、更に納得感が増す。あらゆるビジネスパートナーに納得する形のインターフェースやスキームを提供すること、またリレーションシップをはぐくんでいくことは事業領域が広がるほど指数関数的に難しくなる。扱う在庫の粒度や提供者が異なるというのは、実は管理会社側からすると想像以上の頭痛の種なのだ。

 

GoogleYouTube保有していることが強いわけ

実はこの点、GoogleYouTubeを買ったのはものすごくかしこいM&Aだったなと思う。YouTubeを手に入れて、Googleはマッチング業者であると同時に、在庫提供者にもなったのだ。このポジショニングがどれだけ強いかということを考えてほしい。勿論、他のウェブサイトに対するneutralityの問題はあるが、今更Googleなしで収益を出せる広告媒体がどこにあるのだろうか。Googleに頼らざるを得ないのである。

彼らがYouTubeを持ったことで、Googleは在庫を生み出すサイドにも転換できるわけである。他からの在庫の減少リスクを低減することができるし、自社在庫の価値を彼らのエコシステムのデータをフル活用して高めることができる。マッチング業者はあらゆるデータが手に入る分、在庫を持った瞬間にその在庫の価値を高める的確なフィードバックを返せるのである。

 

それはUberがドライバー在庫を生み出すために自動運転を研究しているのと同じだ。Uberにとっての在庫はドライバーで、そのドライバーを生み出せるのであれば、もうUberにとっての次の在庫は自動車になるはずだ。そうなると自動車会社や自動車ディーラーがDisruptionの憂き目にあうのかもしれない。