足ることを知らず

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広告代理業不要論がそうでもないなぁと思えてきた件

代理店不要論という昔からのお話

デジタルシフトが起きると中抜きが起こるため、基本的に「代理業不要論」が起こってきます。
旅行代理業、貿易代理業、その他に紛れず、広告代理業も不要論をぶつけられてきたわけです。

ただ、この代理業不要論、いくつかの前提条件が必要なのですね。
①広告主と媒体側が直接商取引を行うことが増えてくる
②顧客を多数抱えることによるスケールメリットが働かない

①に関しては、広告主のバイイング・プランニング機能の強化(=インハウス)、媒体の営業機能強化が前提なのですね。
また、デジタルに関しては、②が全く通じない世界だとされてきました。
トラディショナルなメディアでは②を利用して、日本の総合広告代理店が圧倒的なシェアを稼いでいたのですが、
デジタルで「一番いい枠」なんて発想は存在せず、スケールメリットなんて存在しないよねとされてきたわけです。
http://www.fallinstar.org/2009/07/google_6.html

天下無敵のYahoo! Japanのシェアをついに本格的に奪いだしたGoogle大先生の下に、電通さんから打診が。
その内容とは・・・

Googleの一番いい枠を(恐らくグロスで)買い取らせてほしい

・・・・(汗

・・・(汗

Google先生の返事。

当社は、そういう「枠」はございません。

・・・・(汗

・・・(汗

あまりにそのまんま過ぎる回答。
というか、何億あるかしらないキーワードごとのリスティング広告の1位に全部広告を出すつもりだったんでしょうか、電通さん。

でも、これこそがネットと総合の食い違いの象徴なのかもしれません。

まぁ、後から出てきますけど、「いい枠」っていうのが今日のトピックになってきます。

インハウスはどこまで進むのか
当面、代理店の脅威は自らが選択する消費者、即ちインハウスを実施する広告主が何社出てくるかということに尽きると思います。
これは、会社のマーケティング予算のうちどの程度を人件費に寄せられるのか、各広告主によって異なります。
ただ、従来のトラディショナルメディアから、完全にデジタルシフトが出来る広告主以外はきっとインハウスのメリットを完全に享受することはむずかしいかもしれません。即ち、デジタル上で全てのマーケティング活動を終えられる広告主が一体どれだけいるのか、ということに尽きると思います。

即ち下記2つを満たした時、代理店は価値を失う可能性が確かにあります。
1.すべてのメディア費がデジタルにシフトする
2.デジタルで代理店機能がメリットにならない

デジタルが止まり、寡占市場になった
The Pool is Getting Crowded! — DeckPosts

Ad Market Is A (Nominal) Zero Sum Game

Notwithstanding the massive market share movement online, the ad market as a whole, at $544 billion in 2014, has not meaningfully expanded due to the availability of online advertising.

Ad budgets by major marketers generally increase each year in line with their expected sales forecasts, which tend to approximate GNP growth. According to Zenith Optimedia, the average annual growth rate for the ad industry for the last 20 years was 4.2%; for the last 10 years, it was 3.9%.

This makes good sense; there is only so much attention that consumers have and if it moves from print to online, marketers’ advertising budgets will follow.

Even within online, there has been disruption with a move to mobile devices from desktop / web access. Facebook’s Q1 2015 numbers show this well: marketers actually decreased their spending year-over-year on ads served to web users of Facebook, while substantially increasing their commitment to advertising delivered on mobile devices.

This means a critical question is how much more penetrated in user time and attention the internet will become versus other draws―like broadcast, radio, and print―and in what kinds of products. The fact that there are new ways to reach consumers doesn’t really expand the pool of dollars as a whole; it tends to move them from one type of advertising to another.

The key issue now, from my perspective, is that the online advertising market share gains from the advertising pool as a whole, are beginning to slow. While advertising on the internet has grown at a compound growth rate of 27% over the last 10 years, it grew at 17% in 2014, decelerating from 19% in 2013 and it is projected to grow 15% in 2015. I think online will continue to take share from the total market, but at an increasingly slower rate.

まず、デジタルの成長は無限ではなく、広告主の財布という限られたマーケットにおいて、紙媒体などのトラディショナルな媒体から、
予算を奪ってきたことから、成立していたものでした。

しかしながら、その奪い合いにおいて、少しずつデジタルの伸びが鈍化していることも確かなのです。
もはや、デスクトップは完全にその成長が止まる傾向にあり、モバイルへとバジェットと生活者の時間消化が移っています。

もうひとつのポイントとして、広告費は「生活者の時間消化」と必ずしも連動するものではありません。
どれだけ、情報として注目されるフォーマットで広告が提供されるか、という点も極めて重要です。
その点において、デジタル上は①情報量が極めて多い②デバイス接触態度が能動的で関係ない情報を受取にくいと考えられます。
よって、トラディショナル広告からの予算流出は、ある時点で止まる可能性がある、と考えられます。
(若しくは世界のマーケティング予算自体がシュリンクする可能性もありますが)

In 2014, the 15 largest online advertising revenue players generated almost $100 billion of advertising, amounting to 70% of the market. All together, they grew 24%, outpacing the 17% growth of the market as a whole, implying the largest companies are getting bigger.

Excluding growth claimed by the top 15 global players, the rest of the industry only grew 3%, as noted in italics in the table above! It is possible that this is partly because the most exciting growth areas of online advertising―mobile and video―are largely going to Facebook and YouTube (Google), but it is an interesting point, nevertheless.

そして、今やデジタル広告市場は、新しいプレイヤーが入れる市場にはなっていません。
上位15社で70%のシェアを誇る寡占市場です。これは恐らくどのメディアよりも寡占が進んでいる市場です。
寡占市場においては、当然の如く、各プレイヤーとの交渉事が発生します。
そして、代理店はメディアの営業機能を担ったり、スケールメリットを提示することで、競争力を維持することが出来る可能性があるのです。
(日本でのテレビがそうであったように)


世界的な代理店の動き
世界No1の広告エージェンシーグループWPPは極めてシンプルな戦略を打ち出しています。
WPP Annual Report and Accounts 2013 - Why we exist
WPP Annual Report and Accounts 2013 - Four strategic priorities

1.新地域での売上比率を45%まで高める
2.新しいメディアの売上比率を50%まで高める
3.データ、新テクノロジーへのフォーカス。(とある記事では、競合はもはやadobeoracleとも言っている。)
4.グループ間のシナジーを出し、大グループのレバレッジを効かせる。

まぁ従来の広告代理業からは大きくシフトをしていくよというメッセージなのですが、
地域の売上シフトを除けば、特に下記2点がポイントになってくると思っています。

スケールメリットを活かしたデータの収集と活用(良質のヒト=Cookie確保)
②あらゆるデバイスにおける良質の枠確保(private exchange)

先ほどGoogle電通の与太話がありましたが、実は世の中の流れはむしろデジタル上の「いい枠」を買い占める世界観になっているのです。
更に議論が必要なのは、①で価値があるとかんがえられるのがどのようなデータなのか、
そして②の良質の枠をどのように評価、調達するのかという点になります。

とはいえ、日本の広告代理店が生き残っていくためには、アウトバウンド、インバウンド双方に大きな課題があって、
そもそも日本の広告主と運命を共にしていくしかありません。

日本を元気に、みたいなことが会社の生き死にに関わってくるのがこれからの広告代理店だと思っています。