足ることを知らず

Data Science, global business, management and MBA

大企業データ関連プロジェクトがスタックする落とし穴一覧

データ活用をしたいという上層部及び広告主の意見を、コンサルタント及びデータサイエンティストの立場で社外の人間として聞いてきた。主に大企業でのデータ活用という領域に限るとある一定のパターンがあると思っている。

 

様々な部署・役職の人間がそれぞれの立場から、鉄火場と化しているデータ領域で「追いていかれないように」、「活用の相談」を受けるのだが、活用の前にやるべきことがいくつかあると思っている。

 

良くある話に「データはあるけど、どう使っていいかわからない」ので、無理やり目標を設定して、ビジネスに何も役に立たないものが出来ました、という話。これは結局事業側というかビジネス側のオペを理解せずに作ったものに多いと思う。

 

一方で事業側から起案してもデータ活用はこけることがある。これ、一体どうして起こるのだろうか。

 

幸いなことに自分の入っていた案件では、下記のようなことは少なかったが、友人の話を聞いていると、下記のような傾向があると思う。

 

落とし穴1:そこにあるデータからはじめてしまう

大きな企業にその企業が持っているデータをすべて細かく把握している人間など存在しない。していたら、我々に仕事は来ない。よって、依頼ケースは「とあるデータ」から始まることになる。

その状態で目の前にあるデータに飛びつき、活用法を考え始めると、「小さい改善」は可能かもしれないが、できれば、企業として持っているデータにどんなものがあるかということをざっくりとでいいから把握しておきたい。

どんな使用可能なデータが企業内にあるか洗い出す。ここが最初のポイントだと思う。

 

落とし穴2:カタログ作りが地獄作業

大企業であればあるほど、その企業が保有しているデータを全て把握するというのはビジネス全体を把握しているのに等しい。大企業の全事業と全データを把握している人間なんて誰もいない。

よって、どんなデータがあるか、把握をしようとすると各部署の行脚が始まる可能性がある。これ、大変危険。カタログ作りで軽く2年くらい飛ぶ可能性がある。

できれば、各データについて「最低限欲しい情報」をまとめておいたほうが良い。我々は百科事典を作りたいのではなく、社内のポテンシャルのある協業データを探したいのだ。

 

因みに、アップデートの多いこの領域で、社内データを百科事典化をすること自体ナンセンスである。

 

 

 落とし穴3:セクショナリズムをクリアできない

 

まぁ下記のようなことはよくある。

・そのデータにアクセスしようとすると、関係者全員の許可を取らなければならない

・アクセスしたら、集計済みのデータであり、集計元のデータはアクセス不可

・集計定義を変えることに時間がかかり、全くフレキシブルではない

・殆どの情報がマスタを必要とするが、Relationshipが整理されてない

 

よって、ほとんどのデータ活用プロジェクトはトップダウンであったり、関係各所の中間管理職がすでにアグリーが取れている状態で進められるものが好ましい。

 

落とし穴4:無視しても突破しきれない

ここらへんに気づいてくると、ITと事業側の深い溝を埋めるにはもはや事業側でデータを生成するアプローチが一番ではないかという発想が湧いてくる。

そして、事業側でプラットフォームの導入などをしようとするのだが、それはそれでIT部門も主導権を取られたくないので、必死の抵抗を見せる。結果、何が起こるか。

とんでもなく遅いプラットフォーム導入、たかがマーケのプラットフォームに膨大な仕様書という有様である。クイックアンドダーティにPoCを3ヶ月するのに、PoCの準備で3ヶ月かかるのはザラだと思う。

 

日本大企業でデジトラ系PJを進めるときに思うこと

結局、データ活用プロジェクトを進める際に重要なのは、ステークホルダーを最低限のかつ権限のある人間に限定することだ。たくさんの人を巻き込むのは、結果が出てからのほうが良い。結果が出るまでは、トップダウンの指令を受けた上で隠密部隊のように小さくPoCを行い、うまくいったらドヤ顔で報告するというフローが一番日本にあっている気がした。

 

こちら英国では、トップダウンで指令が出た時点で、反抗勢力は首を切りに行く覚悟で(もちろんこちらもさようならする覚悟で)挑むので、むしろ清々しいが、決着が早くつかなかったときの泥仕合っぷりは日本のそれとは比較にならないと思う。