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デジタル時代の戦略策定

Strategic principles for competing in the digital age | McKinsey


上記記事があまりに面白かったのでシェア。

ボードゲーム業者が3Dプリンタによって、生産から出荷までのバリューチェーンを一人で請け負えるとかすごく面白かった。

前半戦は「デジタル化は100年に一度の変化」、「現代の産業革命」といった、見慣れたワードが並んでいるのですが、デジタライズに伴う7つのトレンド・変化と6つの意思決定イシューについてはなかなかどうして面白かった。
まず7つの変化から紹介します。

デジタライズに伴う7つの変化・トレンド
1. New pressure on prices and margins
2. Competitors emerge from unexpected places
3. Winner-takes-all dynamics4. Plug-and-play business models5. Growing talent mismatches6. Converging global supply and demand
7. Relentlessly evolving business models at higher velocity

1は情報の非対称性によるマージンビジネスが死滅するという話。
ちょっと前のHBRにも書いてあったのですが、弁護士のようなプロフェッショナルサービスでも、
今や様々なレビューサイトによる評価や役割の細分化によりワンストップのマージン確保が難しくなっているようです。
役割がどんどん細分化され、一番効率のよいものに予算配分をしていく。

2なんて、完全に内田先生の異業種競争戦略です。
特にデジタライズによって、それが加速度的に進むっていう話ですね。

3はプラットフォーム戦略的な話。
スケールがヒトもカネもモノもあらゆる経営リソースを支配していく。
例えば、GoogleAmazonfacebook。2と4も関連するけど、このプレイヤー達がどんどん世界を飲み込んでいきます。


4は、色んな事業を統合していくプラットフォーム。Amazonロジスティクスと小売とITサービスを統合しているし、
トラベル事業者もExpediaみたいな企業は、完全に統合方面ですよね。ホテル、航空券その他諸々ワンストップ。
1で細分化された事業が、4でプラットフォームとして再集結されるわけです。

5はマッキンゼーとして外せない話題。
ビッグデータのレポートからずっと言っている「データサイエンティスト不足問題」。
あんまり実感しないけど、日本でもちらほら「エンジニアが全然取れない」って話を聞き始めました。
C社とかR社がかなり高額でのオファーを提示しているのと、某G社からの人材流出も止まったようです。


6は、デジタライズがグローバル・ビジネスも変えていくという話。
クロスボーダーの取引やデータのやりとりは激増していきます。
例えばiPodの部品は世界各国に451のパーツを発注して組み上げられています。
こはちょっとよくわからなかったな・・・。


7はデジタライズによるビジネスモデルの変革。
Spotifyは従来のCD,MP3の"曲買い"を月額費によるストリーミングサービスに変えました。
これは、デジタル配信とコンテンツのデジタル化で配送費のいらなくなった世界だからこそ実現するモデルです。
そして、自動車会社は、もしかすると車そのものよりも、自動化のドライビングシステムに注力しなければならないかもしれません。


次の項では、そんな激動のデジタル時代を生き残るためのディシジョンイシューについて書かれています。

デジタライズ時代における6つの戦略イシュー
Decision 1: Buy or sell businesses in your portfolio?
Decision 2: Lead your customers or follow them?
Decision 3: Cooperate or compete with new attackers?
Decision 4: Diversify or double down on digital initiatives?
Decision 5: Keep digital businesses separate or integrate them with current nondigital ones?
Decision 6: Delegate or own the digital agenda?


1ビジネスポートフォリオの再構築。
次々に買収と売却の意思決定をしなければならず、
常にシナジー選択と集中を考えねばなりません。



2カスタマーを引っ張るか、追うか。
イノベーションのジレンマ的な話でもあるのですが、
特にレガシー企業はカスタマーを追随する方向性に陥っているようです。



3新しい敵と協力するか、敵対するか。
数多くの競合が表れる中、敵対はナンセンス。
どこかと組んで、新しい領域にも乗り出すべき。
守りながらも、攻める。



4デジタルの投資やイニシアチブを集中させるか、分散させるか。
これは最初分散させて、芽がでたら、即集中。
ここらへんはprivate equity fundのお得意技なのですが、
私の会社も含め、大きな会社は人材もお金も芽が出る前に集中投資or色んな芽に総花投資しか出来ていない気がします。
ステークホルダーが多すぎて、どうしても集中しきれないのです。



5デジタルとノンデジタルを統合するかしないか。
特にメディアでは、この影響は大きいです。
大抵、デジタルは一取引当たりの利益を下げて、沢山の取引を効率よく回すことでパイを上げていくビジネスです。
そうなると、既存のノンデジタルビジネスは基本的にカニバリを起こすのですが、
基本、そこに未来がないのなら、意思決定をすべきではないでしょうか?




6は専門家に任せるべきか、自分でやるべきか。
デジタル専門家は特化し過ぎているし、既存事業とコンフリクトを起こす可能性がある。
恐らく6は専門家を立てながらも、CEOが自分で推進すべきなのだと思います。




というわけで、単なるまとめになってしまいましたが、
デジタルの変化とそれに対する意思決定をこんなにキレイにまとめるっていうのは
さすがコンサルティング会社だと思います。
極めてバランスの取れた全体観と、緻密な論理と事例による納得感。
見習いたいと思います。



そして、全体的にデジタライズがこれまでの競争環境構造やルールを変えていくというのが骨子なのですが、
やはり既存企業、legendary企業は、イノベーションのジレンマを超えなければならない。
こんな時だからこそ、攻めることこそが、守ることになる、と話しています。

代理店業界が今、一番考えなければならないことかも、と思いました。
まだ遅くないと、信じたい。