足ることを知らず

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広告新時代に対する私の考え③

先日、インターンで一緒だった友人と話して、やっぱり数字で論を展開されると説得力が違うっていう話があったので
取り敢えず、理系らしくたグラフ・数値等を使って論を展開してみます。

図1

(出所:電通総研「日本の広告費」)

上の図を見ると、マス媒体のシュリンクって思ったよりも起こってないことがわかるはずです。そしてインターネット広告が台頭しているとかいう話も少々疑問に思えるところがあるでしょう。

ここで注記しておかなければいけないのは2点
①大切なのは各媒体が企業の課題を解決するのに適しているかを示す案件ベースでの推移である。金額ベースの推移では案件ベースの推移は読み取れない。(広告単価が異なる)
②広告費の頭打ちの様に見えるが、これはバブル前の水準に「戻った」のみである。


図2

(出所:電通総研「日本の広告費」)

こちらは2003年から2007年のCAGR(年平均売上高成長率)です。年平均"市場"成長率と言った方がいいかもしれません。
こちらのデータを見れば一目瞭然。媒体市場は勝ち組負け組がしっかりと出ています。


ここからCAGRはマスで-5%程度、インターネットで30%程度に落ち着くと考えられると思います。マスの減少はこれから10年程度の長期に渡るクライアントのコスト見直しによって「止まらない」だろうと考えられます。対してインターネットの方の成長は実は簡単に止まってしまうかもしれません。

クライアント側から考えると広告意志決定の推移は

①マス媒体

②コスト注視によるマス媒体からweb媒体

③web媒体の適切投資額の見極め、定点化

だと考えられるので、「もうインターネットの投資と課題解決力が比例して上昇しないな。」と思ったら現在の高成長率が維持できないと考えられます。

図3

(出所:電通ファイナンシャルデータ)

大手広告代理店の内部分析なんですが、実際力入れていると言われているインタラクティブの売上高は1.8%のシェアにしかなりません。やはりマス媒体で生きているという事実に代わりはありませんし、この構図を変えるのには相当の努力が必要でしょう。本当は営業利益等にも突っ込みたいのですが、奈何せん製造業の類と比較しても仕方がない上に、広告代理店の様なサービスカンパニーは上場していないので営業利益率の比較対象がありません。



凄く簡単な式を作ると

売上高=案件単価×案件数=インターネット案件単価(安)×インターネット案件数(↑)+マス案件単価(高)×マス案件数(↓)

ただし、案件数=インターネット案件数+マス案件数は一定。

だとすれば、全体案件数が変わらないのに案件単価はインターネットへのシフトでどんどん下がる。これが本質的な問題です。大手代理店は自分たちの持っていないインターネットに流れていくのは全て損益になるので、インターネット広告代理店を買収します。すると、最初の式の最右辺一項目のインターネットに関する広告費は確保できるわけです。しかしながら、本質的な問題を全く解決出来ていません。即ち、いくらインターネット広告代理店を買収しても、収益性の孕む本質的な問題からは逃れられないのです。

これまでが異常だったと言えば本当に簡単に済んでしまうのですが、巨大な市場の中で既存の構造を「異常」と切り捨てることはほぼ不可能だといえます。


そうすると目的を「売上の維持若しくは成長」に設定して
簡単な課題設定としては

1インターネットを儲かる媒体にする。
2インターネットには頼らない。
3全体の市場を成長させる

まぁ例えば、三分位で出てくる打ち手の方向性として
①インターネット案件単価の釣り上げ→1
②インターネットの枠を減らす→2
③インターネットとマスをセットで案件にしてしまう。→1
④案件数自体の増加→3
⑤全く他の媒体を創出する。→3

等色々考えられるわけです。
簡単に出来るけど効果が出ないのではないかというものは①②
効果は出そうだけど単体で出来ることではないというものは④⑤のようなものです。全体の市場成長は正にイノベーションですから、起こそうと思って起こせたら苦労しないよね。

結局③の様に、案件数シフトが起こらないようにセットにしてしまうものが結構有効ではないかと考えられるわけで、これが正に「クロスメディア」になっているということですね。