足ることを知らず

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駄目になると言われてもなかなか駄目にならないものも多い

世の中には「もう駄目だ」「時間の問題」なんて言われて、なんだかんだシェアや売上を維持しているものって多い気がします。

これの最たるものがレンタルビデオだと、僕は思います。


ニコラス・ネグロポンテビーイングデジタルには以下の様な記述があります。

製品やサービスをデジタル形式に直すことが出来るかどうかによって、その業界の未来は100%決まってしまう。

カシミヤのセーターや中国料理を作っているのであれば、ビット化するのにしばらく時間がかかるだろう。
娯楽分野で一番最初にビットに取って代わられるアトムはレンタル・ビデオだろう。レンタル・ビデオには、利用者がアトムを返却しにいかねばならず、ソファーの下に落として気付かなかったりすると延滞料を取られるからだ。(アメリカのレンタル市場120億ドルのうち、25%が延滞料金である。)

この論理展開は至極まっとうで、本質を突いていると思います。不可逆の大きな波がレンタルビデオ市場を襲うと誰もが思っていたはずです。しかしながら、この市場に起こったのは意外な住み分けでした。

レンタルビデオをこのままアトムで使いたいという人間とストリーミングのようなデジタル形式で楽しみたいという人間が半々に分かれているのです。確かに肌感覚で見てもTSUTAYA等に行けば、お客が減ったようには見えません。わざわざ借りてきて、汗をかいて走りながら出勤前にビデオを返す生活を送っている人は山ほどいるのです。

この不思議な現象に関して考えれば、まずデジタル化の方法がストリーミングや期間限定のダウンロードであることが問題かもしれません。例えば、ストリーミングは見たいときに見たい部分を簡単に再生できるわけではありません。ローディングの時間を考えれば少々手間がかかります。ネットワーク環境になければならないというのもネックでしょう。また、期間限定のダウンロードについてですが、こちらに関しては完全にダウンロードに対する慣れが原因だと思います。即ち、ダウンロードしたものが「無効になる」ことに対する抵抗感があるのではないでしょうか?ダウンロードというのは「取得」というイメージがどうしても強く、借り物であるという感覚は皆無に等しくなります。だからこそ、完全に自分のものだったデータが他人によって突然利用制限を受けたかのように感じるのではないか。なんて考えてしまうのです。

DMMがネット系レンタルでは強い気がしますが、上場していないため、詳しいデータがわからないですね・・・。

TSUTAYAは色んな外的環境を味方につけて、小さな波に乗ることを繰り返すことでデジタル化の波を超えている気がします。こんな記事もありました。http://moneyzine.jp/article/detail/131363

CD・DVDレンタル・販売のツタヤ(TSUTAYA)を展開しているカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が好調だ。


 これまで毎年のように増収増益を繰り返してきたが、2009年2月12日に発表した08年第3四半期決算も、連結で純利益が前年同期比53.5%増の69億8900万円と大幅な増益となった。また同時に発表した09年3月の通期連結予想は、最終利益(当期純利益)80億円(前期比72.9%増)で、年間配当の予想は前回予想の7円から8円に増配。景気後退で減配する企業が相次ぐなか、9期連続で増配する見込みで、同社には国内景気の減退の影響は感じられない。業界の競争は年々激しくなっており、CD・DVDレンタル料の価格競争で売上を落としてしまう企業も多いが、同社はライバル企業のゲオと激しい首位争いを演じながら拡大を続けている



財務ハイライトも結構好調。しかも、インターネット事業は全然割合として高くない。
事業区分にもよるんだろうが、決算短信には

1.事業区分は、事業の内容によっております。
2.各事業の区分に属する主要な事業の内容
(1)直営事業
TSUTAYA」等店舗の運営
(2)フランチャイズ事業
フランチャイズ方式による「TSUTAYA」事業及びそれに伴う什器・備品の販売等
(3)商品事業
TSUTAYA」加盟店、その他企業への商品販売等
(4)インターネット関連事業
インターネットを利用して「TSUTAYA」会員等に対して情報を提供する事業及びインターネット上で行う
通販事業等
(5)カード関連事業
クレジットカード関連事業及びポイント管理事業等
(6)マーケティング・ソリューション事業
主に、法人向けのソリューションサービス事業等
(注)当社(持株会社)、㈱CCCキャスティング、㈱CCCライフスタイル総合研究所及び㈱TSUTAYA HOLDINGSに
つきましては消去又は全社欄に含めて記載しております。

とあるので、インターネットを通したアトムレンタルは際どいが、ストリーミングなんて確実に(4)の区分だと。

今のレンタルビデオ業界の勢力図って下記のような感じらしいです。


確かに末端のビデオショップとかはバンバン潰れているイメージがあるので(カードという制度を取っている分、チェーンの数と強さが比例するのは致し方ないところではありますが)もしかすると市場全体としてはかなりシュリンクしているのかもしれませんが、ある一定以上の寡占状態になれば、おそらくシュリンクは止まるのではないかと思います。寡占は市場の成熟とみなすことも出来るでしょうから、成長も衰退も遅くなる方向に働くはずです。

このほかにも「ヤバいヤバい」と言われるだけで意外と僕らが生きている間は持ってしまうものは沢山あるのかもしれません。それを見分けるためにはまず、「自分の生活」が変わるかどうかの肌感覚に照らし合わせてみることが肝要だと思います。


※つけたし:やはりTSUTAYAの躍進に海外ドラマは欠かせないようです。海外ドラマは5〜6年前に比べて、500%増しでお金稼いでるみたいです。確かに続編を一気に見てしまいますからね。